(積水ハウス情報誌「メゾナー」2010春号に掲載の原稿を転載しています)
賃貸住宅の賃借人が亡くなった。
賃借権を告ぐ相続人がすんなり決まればいいがあれこれもめてしまったときは・・・?
賃貸住宅の賃借人が亡くなったとき、どんな権利問題が残るのだろうか。
賃借人が亡くなったからといって、当然、借主の権利がなくなるというわけではない。借家人は、賃借権という権利を持っていることになっている。これが、亡くなった借家人の相続人に相続されることとなる。一方、同居人であれば、内縁の妻でも相続同様の権利が認められた例が多い。
となると、亡くなった借家人に、同居していた内縁の妻と、別居していた本妻やその子達とがある場合、どちらを新たな借家人として扱えばよいか、貸主にとって悩ましい問題となる。裁判所の立場は実際に同居していたものに好意的で、亡くなった借家人に法律上の相続人があるときでも、同居してきた内縁の妻や、事実上の養子に借家権を主張することができるとしている。この場合は、貸主側もそちらのほうを借家人として扱っていくこととなる。この点は、貸主側もよく頭に入れておいたほうがいいだろう。
さて同居人がいない場合だが、この場合には、まず相続人探しをしなければならない。
そのためには、亡くなった方やその親族の戸籍謄本や住民票を手に入れることが必要になる。誰か弔ってくれる人がいて、その方たちからそうした資料を出してもらえば話は早い。ところが、一人モンで、知人が集まって葬儀をやったなんぞという場合になると、これが案外厄介だ。個人情報が大切にされる世の中、簡単には謄本など手に入らない。
一番簡単なのは、弁護しか司法書士に頼むこと。これで、相続人の見当はつく。相続人の見当がついたら、そこに連絡をして、賃借権や、住居内の家財・支部地を相続するつもりがあるのかどうかを聞いてみるのが一番だ。
家賃を払ってまで相続をする気はないとなれば、権利放棄書を書いてもらって、家財道具を処分することになる。この処分代が、これまたバカにならない。相続人が、相続放棄をしていない場合は、この処分費用を相続人に相続分に応じて負担してもらうこととなる。延滞家賃や、損傷部分の補修料も同じことだ。
亡くなった仏様に、かなりの借金があったなんぞということになると、相続人は、相続放棄をしてくるやも知れない。こうなると、とりあえずは敷金でまかなえる範囲で処分をしてしまって、残りの費用は泣き寝入りということになる。最も、相続人がみんな相続放棄でいなくなってしまった場合には、仏さんの資産は、国のものになることになっている。ではあるが、国が、借地ならともかく、借家の賃借権を主張してがんばったという話はあまり聞かない。まあ、よほどの貴重品がない限り適当に処分して問題はないだろう。
一番困るのは、相続人の間で、相続をめぐって争いが起こってしまった場合だ。こうした場合には、相続人間に遺産分割協議ができるのを待つしかないのだろうか。
だが、それではその間にも賃料の未納が増えてしまう。そこで相続人間で、賃貸関係についての部分協議をまとめてもらって、それにより、その関係だけ早く解決してもらうことも多い。それもできない場合は、相続人全員を相手にして、法定相続分に従って分割して家賃を請求する。遺産分割協議ができるまでの間は、家賃の支払い義務は各相続人が相続分に応じて相続する。この場合、結局家賃全額の支払いがなければ、支払いを催促した上で、建物明け渡しの請求もできる。まあ、いずれにせよ、賃借人が相続人となるべき人と同居していればあまり問題はない。その同居人が相続人となってくれることがほとんどだろうし、こういう単純なケースなら問題は少ない。しかし、以上のように少し複雑なケースだと、家主にもそれなりの負担はかかってくる。だが、ここにご紹介したようなノウハウを心得ておけば、あわてることはないだろう。それでも心配なときは、弁護士に相談していただきたい。